今回は家庭菜園で安全に、そして確実にナメクジが退治できる方法を、農家目線から紹介します。
(※ナメクジの写真などは出てこないため、安心してください!)
ナメクジは、野菜などについているとヌルヌルしていて、見た目も気持ち悪いですよね。
単に不快なだけならいいのですが、ナメクジは柔らかい葉を好むため、芽生えたばかりの若い苗が狙われることも少なくありません。
朝起きたら、苗が生長点もろとも食べられて、芯だけになっていた…なんていう経験はありませんか?
もしも周辺に白っぽく光る筋が残っていたら、ナメクジの可能性が大です。
ナメクジは夜行性のため、日中は姿を隠してしまい容易には見つかりません。でも、このまま放っておくと、いずれ他の苗も餌食になってしまいます。
また、ナメクジには、人間に害を及ぼす寄生虫がついている場合があります。特に問題視されているのが広東住血線虫。人の体内に入ると髄膜脳炎を発症させる恐ろしい寄生虫で、日本でも死亡例が報告されています。
ナメクジは、野菜のためにも、人のためにも、できれば駆除しておきたい害虫です。
でも、夜に動く夜行性のため、捕まえて駆除することが難しいという問題があります。
そこで今回は、効果的にナメクジを駆除する資材や方法について解説します。
また、「ナメクジ用の農薬は危険か?」についても触れて、お話したいと思います。
ナメクジは対策が難しい
葉っぱが穴ぼこだらけ…ナメクジの仕業らしき被害を見つけても、葉っぱの上でナメクジを見つけることは、ほとんどありません。
ナメクジは、主に夜に植物を食い荒らす、夜行性の生き物だからです。
ナメクジは体の約90%が水分。しかも人間のような皮膚がなく、体を覆うのは薄い膜のみなので乾燥にとても弱いという性質があります。そのため、太陽の当たる日中は、プランターや石の下、植物の陰などのジメジメとした場所に身を潜めています。
湿度の高い梅雨時には日中にも姿を現すことがありますが、活動するのは人目につきにくい、日が沈んだ夜の間です。
しかも、ナメクジは雌雄同体で繁殖力が強く、1匹が一生で産む卵の数は300とも400ともいわれています。
もし、プランターの片隅で数匹のナメクジを捕まえても、それは氷山の一角にすぎず、周辺にはその何倍ものナメクジが潜んでいると考えるべきです。
ちなみにナメクジには昆虫のような強固な顎がないため、硬い葉は食べません。一方で柔らかな若苗や、アブラナ科の野菜などは大好きです。
苗の植え付け直後や、キャベツなどのアブラナ科の野菜を育てている場合は、ナメクジに対して特に注意が必要です。
塩やコーヒーはナメクジに効く?
昔からナメクジの駆除には、塩やコーヒーが効果的といわれています。
塩を振りかければ、ナメクジは浸透圧の影響で体が縮み、弱っていきます。ただし、そのままとどめを刺さずに放置しておくと、雨が降って水を含めば元通りに復活してしまいます。つまり、単に塩を振るだけではナメクジは駆除できないのです。
では、コーヒーはどうでしょうか?
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コーヒーには、ナメクジの神経に作用するカフェインが含まれるため、ある程度の効果が期待できます。駆除したい場合には、カフェイン濃度の高いコーヒーをスプレーにしてナメクジに吹きかけます。
ただし、塩、コーヒースプレーのいずれの方法も、目の前に現れたナメクジを駆除するだけの方法で、どこに潜んでいるのかがわからないナメクジが駆除できる方法ではありません。
たとえ数匹の駆除に成功しても、隠れていた別のナメクジによって食害が続きます。
ナメクジの被害を、コーヒーかすを撒く、銅線でプランターを囲むなどで防ぐという方法もありますが、これはナメクジが嫌う成分で寄せ付けにくくするだけの効果で、駆除の効果はありません。
周辺で繁殖してしまうこともあるし、
隙間をぬって侵入してくるヤツも多い…
ナメクジの被害を止めるには、人のいない夜間の活動中にも駆除できるトラップを仕掛ける方法が有効です。
ビールトラップはナメクジ退治に有効?
ビールトラップとは、ペットボトルなどの容器にビールを入れて、ナメクジを誘き寄せるものです。
勘違いされがちですが、ナメクジにとってビールが毒というわけではありません。ビールの匂いに引き寄せられたナメクジが、ビールの中に落ちて溺死するという仕掛けです。
ビールトラップは効果が高く、ナメクジが次々と罠にはまっていきます。
でも、食害が止まるかといえば、私の経験では正直それほど変わりません。
なぜなら、トラップにかかる数をはるかに超える、たくさんのナメクジが周辺に潜んでいるからです。
トラップにかかったナメクジも、やっぱり氷山の一角なのね…
本気で効果を出したい場合には、このトラップを1m間隔ほどに置くくらいでないと、この方法での駆除は現実的ではありません。また、ビールの匂いは、ナメクジ以外にもコバエや他の害虫なども寄せ付けてします。
さらに、もう一つ伝えておくべき重要なことがあります。
トラップにかかって溺死したナメクジの始末、かなりエグイです…
ナメクジ退治は「忌避」ではなくトラップでの「駆除」
塩やコーヒー、ビールなどの身近な食材を使ったナメクジ対策は、安全性の高い方法ではありますが、効果はあまり期待できません。
忌避を狙った対策は気休め程度にしかなりませんし、コーヒースプレーやビールトラップで数匹だけを駆除しても別のナメクジが直ぐにやって来ます。
確実に被害をとめるためにはビールトラップと同じように待ち伏せして駆除する効果のある、薬剤の使用がお勧めです。
ビールトラップはたくさん仕掛けると大変なことになっちゃうけど…
薬剤なら広範囲にまけからね
農薬には「危険」というイメージが強いですが、ナメクジ駆除剤の場合は、天然由来の成分を使用した、有機農業にも使える安全性の高いものもあります。
一方で、確かに危険な農薬も存在しています。
プロ農家ではない一般の人には、どの農薬が危険性が高く、どの農薬が比較的安全なのかを見分けることは簡単ではありません。
園芸店には、家庭菜園向けのナメクジ駆除剤が販売されています。
「家庭菜園に使える程度だから、農家が使う農薬よりも安全でしょ」と思っていませんか?
これは大きな誤解で、例えばナメクジ用の農薬については、農家が使うものも、家庭菜園用に販売されているものも、成分はほぼ同じです。
違いは、家庭菜園用のものは少量で販売されていて、ラベルがイラスト付きで可愛いという点です。
実はこれは、家庭菜園コーナーで販売されている、あるナメクジ駆除剤の注意書きです。
「ペットが誤って多量に食べると死亡する恐れがあります」と、明記されていることを知っていますか?
ナメクジ対策には農薬は欠かせませんが、農薬はしっかりとした知識をもって選ぶべきです。
次の項目より、ナメクジ駆除のための農薬の選び方について解説します。
市販農薬にも忌避剤と殺虫剤の2通りがある
家庭菜園用のナメクジ農薬には、ナメクジの嫌う成分で寄せ付けにくくする忌避剤と、ナメクジの駆除を目的とする殺虫剤との2通りがあります。
さらにその中でも、粒剤タイプとスプレータイプとがあります。
ナメクジ被害を確実に抑えるには、粒剤タイプの殺虫剤が効果的です
粒剤タイプの多くは、ナメクジが神経障害や生理障害を起こす殺虫剤です。
一回まくと、比較的長い期間の効果が期待できます。
「ナメクジの神経や生理機能に作用する」ときくと、少し怖く感じるかもしれませんが、土の中にも普通に存在している「天然由来の成分」を使用した、安全性の高い薬剤もあります。
スプレータイプの薬剤は「天然成分」のものが主流で、殺虫性があるにもかかわらず、家庭でも安心して使うことができるため人気です。
ただし、目の前で直接ナメクジに噴霧しなければ駆除できないため、人目につかずに行動する夜行性のナメクジには、効果が限定的です。駆除という意味では、コーヒースプレーなどと同程度です。
ナメクジの殺虫粒剤には2種類ある
市販されているナメクジの殺虫粒剤は、主要成分によって2種類に分けることができます。
- 燐酸第二鉄系の農薬
- メタアルデヒド系の農薬
どちらも、ナメクジの好む穀物の粉などに殺虫成分を練り込んだ毒餌剤です。これをナメクジが来そうな場所に仕掛けて誤食を誘います。
燐酸第二鉄製剤もメタアルデヒド製剤も、食べたナメクジは数日以内でお亡くなりになります…
さて、「ナメクジを駆除する」という結果は同じなのですが、私は安全性への観点から燐酸第二鉄系のものを必ず選択します。
これから、その理由を説明します。
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メタアルデヒド系の農薬の効き方
「ペットが誤って多量に食べると死亡する恐れがあります」
この注意書きは、メタアルデヒド系のナメクジ駆除剤に記載されているものです。
メタアルデヒドは中毒を引き起こす神経毒で、実は、ナメクジ以外の動物にも影響を及ぼします。
一定量体内に入ると痙攣や意識障害などを引き起こし、重度の場合は死に至ることもあます。
ナメクジを駆除する程度の量なら、人間の大人はそれほどの心配する必要はありません。でも、体が小さい動物だと、少量の摂取で致死量に至ってしまうこともあります。そのため、小さな子どのもいる家庭や、犬、猫などには注意が必要な農薬です。
実際に、ペットの誤食死亡事故は相次いでいる様子で、獣医などが注意喚起しています。
ペットの誤食を防止するためにカバー付きのものも販売されているので、メタアルデヒド系の農薬を家庭菜園で使う場合には、このように危険性の低いものを選ぶようにしましょう。
メタアルデヒド製剤は、口から摂取しなくても粘膜の外側から接触するだけ効果があるため、農家では希釈液を噴霧して使用する場合もあり、即効性や利便性には優れています。
一方で、私が使用している燐酸二価鉄製剤は、食べなければ効かないタイプのナメクジ駆除剤です。
燐酸二価鉄系の農薬の効き方
燐酸第二鉄は天然の土壌中にも存在する成分で、薬剤が微生物で分解されると野菜の肥料としても知られるリン酸と鉄になります。
ナメクジが燐酸二価鉄製剤を食べると、体が生理障害を起こして、それ以上の栄養がとれなくなり、それが原因となって衰弱死します。
これはナメクジ類のみに起こるもので、犬や猫、人間が誤って食べてしまってもナメクジ同様の生理障害は起こしません。
ナメクジが完全に死ぬまでは3日ほどかかりますが、燐酸第二鉄が体内に入った時点でそれ以上は食べられなくなるため、野菜への食害は直ぐに止まります。
燐酸第二鉄製剤は、アメリカやEUなどでも広く認められており、有機農業にも使用することの出来る安全性の高い農薬です。
安全性という点もありますが、別の理由でも、私は燐酸二価鉄系の農薬を選んでいます。
メタアルデヒドのナメクジへの効き方が、少しホラーなのです…
メタアルデヒドは神経毒のため、口や皮膚から体内に吸収されると直ぐに作用し、ナメクジは大量の粘液を出して痙攣をおこしながら死んでいきます。その死骸は、駆除剤の近くに残ります。
一方で燐酸二価鉄の場合、薬剤を食べたナメクジは巣穴などに戻って、ひっそりと死んでいきます。そのため、私たちが死骸を目にすることは殆どありません。
ナメクジ繁殖期と駆除剤の効果的な使い方
燐酸二価鉄系薬製剤とメタアルデヒド系薬製剤はどちらも、毒餌のトラップとして、ナメクジの通りそうな場所に仕掛けます。
野菜への直接的な散布は避け、プランターや畝の周辺を包囲するように、パラパラとまいておきます。燐酸二価鉄は天然由来の安全性の高い成分ですが、薬剤の主原料である穀類が原因でカビが発生することがあるため、株元から少し離れた場所に散布しましょう。
燐酸二価鉄製剤は、比較的雨や水に強く加工された粒剤です。そして、ナメクジに対しては、粒剤の形が残っている限り有効です。降水量などにも影響されますが、薬剤をまいて数週間程度は効果が続きます。
さて、ナメクジ被害が大量発生するのは梅雨時の5月や6月ごろ。でも、効果的にナメクジの被害を抑えたい場合には、梅雨時以外にも駆除するべき時期があります。
それは、ナメクジの繁殖期。
でも、実はナメクジの繁殖時期は秋だということを知っていますか?
ナメクジの寿命は2~3年といわれ、実は一年を通して私たちの身近に潜んでいます。ただし、乾燥に弱いため通常は石の下や植物の陰などでひっそりと生活し、ジメジメとした梅雨の時期や、キャベツや白菜などの結球野菜の内側以外では、あまり見かけることがありません。
乾燥を極度に嫌うナメクジが産卵時期に選ぶのが、残暑が落ち着いた秋から春にかけての頃です。私たちは、ナメクジの姿を見てから「駆除しなきゃ!!!」とあたふたしがちですが、被害にあわない最も賢い方法は繁殖させないことです。
梅雨時期では、すでに産卵が終わっています。ナメクジを駆除するには、繁殖期にあたる10月~11月ごろに駆除剤を散布しておくことが、とても効果的です。
もちろん、それだけでは完璧ではないため、春ごろから定期的に散布を続けるとよいでしょう。
次からは、秋にもナメクジ退治ね
産卵期が過ぎてしまった後でも、駆除剤の効果は十分にあるよ
とりあえず今年は、今いるヤツらを粘り強く退治して
現在、この燐酸二価鉄剤はナメトールとMICナメクジ退治、スラゴ粒剤のほぼ3種です。
効果はどれも同じですが、ナメトールとMICナメクジ退治は、薬剤の色が乳白色、スラゴ粒剤は青色です。
私の場合、薬剤が分解されずに残っているかを確認しやすいため、青色のスラゴ粒剤を使いますが、畝の周辺の見た目がいかにも「薬剤まいてます!」という感じで、良いとはいえません。
家庭菜園ではナメトールやMICナメクジ退治がお勧めです。
コメント
家庭菜園でスラゴを愛用して来ましたが、
近年、苗の廻りをスラゴで囲って置いても避けて通って苗を食害する様になりました。
(使用期限は1年以上残っています。)
同様の経験をされた方は有りませんか?
・・・ 「MICナメクジ退治」は使った事が有りませんが、こちらではどうでしょう?
スラゴ粒剤をまいていても、作物が食害されてしまうことがあります。残念ですが…私も、多少の被害は想定内です。
スラゴ粒剤などの燐酸第二鉄系の殺虫剤は、ナメクジが触れるだけでは効きません。ナメクジが食べて、初めて殺虫力が発揮されるので。粒剤は、穀物の粉などでナメクジなどが食べたくなるような味や香りにしているようですが、それ以上に野菜のほうが魅力的な場合は、そちらが食べられてしまうのかもしれませんね…
ただ、まいておくのと、まいておかないのでは、被害の量が全然違います。だから、もしスラゴ粒剤を使っていても食べられてしまうようなら、周辺にかなりの数のナメクジさんが潜んでいるのかもしれません💦
ナメクジは梅雨時期に目立ちますが、畑をよく観察していると、残暑が過ぎ去った秋ごろにも頻繁に見かけるようになります…この時期から雪溶けした春頃に卵が産みつけられるため、秋や春先にも駆除を意識することで、私は被害が大幅に軽減されるようになりました。
MICナメクジ退治も、成分的に効き方はほぼ同じはずです。