石灰窒素は、石灰石と炭化物を原料に作られる化合物に、窒素を反応させてつくられる農業資材です。
肥料や土壌改良の効果に加えて、除草や病害虫・病原菌への殺虫・殺菌効果もある非常に便利な資材で、日本では明治時代から使われているんですよ!
そして近年では、農林水産省が定める持続農業法で、石灰窒素は肥効調節型肥料に認定され、環境に優しい肥料としても注目を集めています。
今回は石灰窒素が環境に優しい理由や、人間に対しての安全性、効果的な使い方などについて詳しく紹介します。
石灰窒素は人間や環境にやさしい資材
石灰窒素は、農薬取締法と肥料取締法の両方に登録されています。つまり「農薬であり、化学肥料でもある」という資材なのです。
「農薬」や「化学肥料」にはネガティブなイメージがもたれがちですが、石灰窒素は農薬などの基準が厳しいEU諸国でも承認されています。それは石灰窒素が、農薬としての成分が野菜や土壌に残留したり、化学肥料としての成分が環境を汚染したりという心配がほとんどない、人間や環境にやさしい農業資材だからです。
次に、石灰窒素が支持されている具体的な理由を、少し解説していきます。
難しい用語は苦手…という方は、使い方の解説までとばしてね
▶石灰窒素の効果や使い方
「農薬」として安全な理由
「農薬」という面でみると、石灰窒素の有効成分カルシウムシアナミドは、土壌中の水分と反応すると農薬としての有効成分シアナミドに変化し、殺虫・殺菌などに効果を発揮します。
でも、この農薬としての効果は短期的なもので、シアナミドは数日から10日ほどで安全なアンモニアへと分解されてしまい、毒素の作物への吸収や、土への残留はありません。
厳密にいうと、シアナミドは植物にも影響をあたえるため、分解されるのを待ってから野菜の種まきや植え付けするの
土壌中から毒素が完全に消滅する、という点が「安全」のポイント!
「化学肥料」として環境にやさしい理由
「肥料」という面でみると、シアナミドが分解されて作られるアンモニア(窒素と水素の化合物)は、肥料三要素の一つである窒素成分として植物に利用されます。
アンモニアは、窒素と水素がくっついたものよ
N2(窒素)+3H2(水素)→2NH3(アンモニア)
窒素は、植物の生命維持に欠かすことのできない重要な要素です。生長や日常の代謝でたくさん消費されるため、野菜の植え付け時に土に混和する元肥(もとごえ・もとひ)には、必ず窒素成分が含まれます。
さて近年、化学肥料の使用による水質汚染が問題になっています。農耕地に投入される窒素肥料が雨で土壌から地下水や川などへと流出し、プランクトンの大量増殖というような生態系への影響や、飲み水への安全性が懸念されているのです。
やっぱり、化学肥料はヤバイ?!
窒素を流出させてしまう環境や、肥料のあげ方や問題なの
「化学肥料=悪」というわけではないのよ
「化学肥料」といっても、実はたくさんの種類があります。
肥料の窒素成分が土から流れ出てしまうという現象は、窒素が土の中で自由に動ける、つまり窒素が土の粒子から離れている状態にあるときに起こりやすくなります。
肥料の窒素成分には、例えば磁石のN極とS極のように窒素が土に吸着しやすいものもあれば、S極とS極のように遊離しやすいものもあり、問題になりがちなのは後者の状態のものです。
実は、化学肥料や有機肥料を問わず、どの種類の肥料も最終的には窒素が土の粒子から遊離しやすい状態になります。
多くの肥料は【土に吸着しやすい状態(N極S極のような関係)】→【土と離れやすい状態(S極S極のような関係)】へと分解されたのち、植物に吸収されるからです。
問題の本質は「化学肥料か、有機肥料か」ではなく、窒素成分が土から離れるタイミングと、その時の量なのです。
短期間に、過剰に窒素が土の粒子から遊離してしまうと、植物が吸う前に流れてしまうことがある!ということよ
有機肥料が良いとされる理由の一つは、窒素が少量ずつ、ゆっくりと土の粒子から離れていくから。
例えば化学肥料として代表的な硫安(硫酸アンモニウム:アンモニア+硫酸が結合したもの)は、植物が吸収しやすい即効性の優秀な窒素肥料ですが、その分だけ分解も早く、植物が吸収する前に流れてしまうことがあります。硫安の場合は、施肥のタイミングなどを誤ると窒素の約1/2が流出してしまうともいわれています。
石灰窒素の窒素成分は、石灰窒素に含まれる成分と結び付いて炭酸アンモニウムや重炭酸アンモニウムの姿をしていて、同じ化学肥料でも硫安とは異なるタイプです。さらに、分解の過程でジシアンジアミドという、他の肥料には含まれない成分が作られます。炭酸や重炭酸のような弱酸と結合したアンモニアは土と吸着しやすく、さらにジシアンジアミドには分解が少しずつ緩やかに進むようにコントロールする働きがあるため、植物は取りこぼすことなく窒素を吸収することができます。このため、雨などで流亡する心配が少なくなるのです。
石灰窒素の窒素成分、炭酸アンモニウムや重炭酸アンモニウムは、作物の吸収に合わせて肥料としてじんわりと効いていくの
流亡率も硫安に比べると1/4程度といわれていて、9割近くが植物に吸収されるよ!
これらが、石灰窒素が農薬基準が厳しいヨーロッパ諸国でも受け入れられている理由の一つで、日本でも持続農業法に基づく肥効調節型のエコな肥料として認定されています。
石灰窒素の働き
石灰窒素には窒素肥料としての効果や、殺虫・殺菌としての働きがあります。さらに、除草効果や、酸性に傾いた土壌を中性に近づける土壌pH調整剤としての効果も期待できます。このように、石灰窒素は上手に使えば、一石三鳥にも四鳥にもなる、非常に有用な資材です。
次に、それぞれ作用について、詳しく解説します。
2~3か月間じわじわ効く緩効性の窒素肥料
石灰窒素は化学肥料でありながら、有機肥料のようにじっくりと効く緩効性の肥料です。
さらに、窒素成分を約20%も含み、一般的な有機質肥料である鶏糞(窒素3%前後)や油粕(窒素5~6%前後)と比較しても高濃度のため、効率よく施肥することができます。
石灰窒素のもともとの窒素成分であるシアナミド態窒素は、そのままの姿では植物の根が吸収することができません。
水や微生物の働きによって、シアナミド態窒素→尿素→アンモニア態窒素(炭酸アンモニウム・重炭酸アンモニウム)→亜硝酸態窒素→硝酸態窒素へと時間をかけてゆっくり変化し、主に硝酸態窒素まで分解が進んでから肥料としての効果を発揮します。
稲などのようにアンモニア態窒素の状態で吸収する植物もあるけど、多くの植物は硝酸態窒素の状態になってから吸収するの
他の化成肥料にも、硫安(硫酸とアンモニアの化合物)や塩安(塩酸とアンモニアの化合物)などのようにアンモニア態窒素から硝酸態窒素への変化した後に植物に吸収されるものがありますが、石灰窒素のアンモニア態窒素から硝酸態窒素への分解はこれらに比べて非常にゆっくり進みます。(前の項目で詳しく解説▶石灰窒素は人間や環境にやさしい資材)
分解の速さは、土の中が微生物が活動しやすい環境かどうか(地温や土壌pHなど)にも影響されますが、石灰窒素は70日~100日間じっくり効くタイプの肥料と同等レベルの肥効が期待できます。
雑草の除草効果
石灰窒素には2通りで除草効果を発揮します。
まず、石灰窒素の農薬成分シアナミドにより、直接的に植物を枯らす効果です。葉や根から吸収させることで、雑草の生育を阻害します。
もう一つは、石灰窒素の農薬成分シアナミドによる、種の休眠を覚醒させる効果です。
多くの種には休眠と呼ばれる、発芽しない期間があります。例えば、秋に土にこぼれた雑草の種の多くは、一定期間発芽しないよう休眠に入ります。もし、こぼれ種が直ぐに発芽してしまった場合、冬の寒さで枯れてしまう可能性があるからです。
寒い冬は種の姿で休眠して、春になって暖かくなってから芽をだす!
休眠は雑草にとっての生存戦略なの
石灰窒素には、種をこの休眠を攪乱させ、目覚めさせる作用があります。秋の収穫後に石灰窒素を散布すると、雑草のこぼれ種が「春が来た!」と勘違いして発芽します。この効果を活用すると、春に生えてくるはずだった雑草を強制発芽させ、冬の寒さにあてて枯らすことができるのです。
土壌中のセンチュウを駆除
石灰窒素の農薬成分シアナミドには、土壌中のセンチュウへの殺虫作用があります。
作物の根を加害して生育を阻害するネコブセンチュウやネグサレセンチュウは、甚大な被害を引き起こすにもかかわらず駆除が難しい厄介な害虫です。プロ農家の場合は、クロルピクリンやD-D剤などの農薬を使用して土壌をまるごと消毒することもありますが、これらは刺激性が強く取り扱いが難しい薬剤のため、家庭菜園ではお勧めできません。
そこで、代替方法としてお勧めなのが、石灰窒素を使った土壌消毒方法です。
石灰窒素のみをそのまま土に混和しても効果が得られますが、太陽熱消毒と併行するとより効果的です。
ネコブセンチュウ・ネグサレセンチュウ駆除のための注意点
播種または植え付けの2~3週間前に、1㎡あたり50g~100g程度の石灰窒素を混和します。殺虫成分は、センチュウに直接触れることで駆除効果を発揮します。地表にパラパラとまくだけではなく、センチュウが生息する30㎝程度の深さまでしっかりと混ぜ込みましょう。
また、ネコブセンチュウやネグサレセンチュウは、地温が低い冬の間は活動を止め、卵で越冬する場合もあります。卵に対しては殺虫成分が効きにくいため、卵が孵化して活動が活発になる地温が15℃以上の時期を狙って施用してください。
太陽熱を利用した石灰窒素での土壌消毒方法は、後ほど紹介します。
根こぶ病に対する殺菌効果
石灰窒素の農薬成分シアナミドは、土壌中の有害な病原菌に対しての殺菌作用もあります。特に、アブラナ科の野菜の根が障害を起こす根こぶ病に対しての効果が認められています。
播種または植え付けの2~3週間前に、1㎡あたり100g~200g程度の石灰窒素を混和します。
有機物の腐熟を促進
石灰窒素には土壌微生物の働きを活発にして、有機物の腐熟を促す効果があります。
有機物(植物の残渣、油粕、米糠など)を堆肥や肥料として利用するためには、微生物の存在が不可欠です。土壌に有用な微生物を増やし、活発に働いてもらうためには、土を弱酸性~中性に保つことと、微生物のエサとなる炭素と窒素を十分に供給することが重要になります。
微生物にとって炭素(C)は活動のためのエネルギー源であり、さらに窒素(N)は増殖の時に体をつくる重要な要素でもあるのよ
石灰窒素は、土を弱酸性から中性に矯正するアルカリ成分(石灰)に加えて、微生物の活動に必要な炭素と窒素を備えた資材です。これらによって、土壌微生物が活発になり、短い期間で有機物を腐熟させることができるのです。
微生物が有機物を分解すると、副産物として有機酸(乳酸、酪酸など)が生じる
有機酸は土をふかふかにする良いものだけど、「酸」なので、土を酸性に傾けてしまうというデメリットもあるの…
微生物は強い酸性が苦手…急激に増殖すると、自らが作り出す有機酸で土の中を居心地の悪い環境にしてしまため、適量のアルカリ成分を加えてあげることで元気が長続きするのよ
酸性寄りの土壌pHを改善
石灰窒素には、酸化カルシウムとして、60%もの石灰成分が含まれています。これは消石灰に相当する量で、一般に用いられる苦土石灰よりも効果の高いpH矯正資材(酸性に傾いた土壌を、中性寄りに調整する資材)です。
太陽熱を利用した石灰窒素での土壌消毒方法
石灰窒素を混和するのみでも、有効成分シアナミドによる土壌センチュウへの殺虫や土壌細菌への殺菌の効果が得られますが、太陽熱や、土壌微生物の働きを併用することで、さらに高い効果が期待できます。
太陽熱消毒法や土壌還元消毒法と呼ばれるもので、土を有害菌や害虫が生存できない高温状態や無酸素状態したり、有害菌と拮抗する微生物を増殖さたりすることで、センチュウや有害菌の密度を減らします。
ちなみに太陽熱消毒法、土壌還元消毒法のどちらも、石灰窒素を使わずに有機物のみの施用して行うこともできますが、石灰窒素と有機物とを掛け合わせることで土壌微生物の活動がより活発になり、地温も上がりやすくなります。
強い刺激臭のある農薬を使うことなく、低コストできる、人や環境にやさしい土壌消毒方法♪
私はこの方法で、被害が深刻だったネコブセンチュウの抑え込みに成功しているのよ!
石灰窒素+太陽熱消毒・土壌還元消毒のやり方
太陽熱消毒法、土壌還元消毒法は、微生物が働くほどに高い効果が得られます。そのため、微生物が増えやすいように、土に有機物を混ぜ込みます。有機物は、米糠やふすま、糖蜜などの発酵しやすいものが適しています。
今回はコイン精米所などから無料で手軽に入手できる、米糠を使った方法で紹介します。
微生物の活動は地温が上昇すると活発になるため、晴天が続く暑い季節に行います。好天に恵まれれば2週間程度で効果が得られますが、曇りや雨の日も考慮して1か月程度の消毒期間をもうけるようにしましょう。
■用意するもの
- 石灰窒素 1㎡あたり60gから100g
- 米糠 1㎡あたり1㎏から2㎏
- 光を通す透明のビニール(透明マルチなど)
■土壌消毒の方法
- 晴天が続く日を狙って、石灰窒素、米糠を土にまいて十分に混和します。石灰窒素の有効成分シアナミドは、病害虫と接触することで殺虫・殺菌効果を発揮します。センチュウは地下15㎝~30㎝、ネコブ病原菌は地下15㎝ほどの深さで生息しているため、30㎝ほどを目安に耕し混ぜ合わせます。
石灰窒素は目の粘膜や皮膚に直接触れると炎症を起こす恐れがあるため、手袋など着用し、飛散に注意して散布しましょう。 - たっぷり潅水して透明のビニールで覆い、めくれあがったり、風で飛ばされないようにしっかりと押さえます。
太陽の熱を浴びると一気に反応が進み、ビニールの上から触れても「熱い!」と感じるほどまで地温が上昇します! - 約1か月程度放置した後、ビニールを剥がして浅く耕して土壌消毒は完成!
そのまま作物の種まきや、植え付けができます。
次に、石灰窒素を使った太陽熱消毒や土壌還元消毒についてメカニズムを少し深堀して解説します。
太陽熱消毒とは
石灰窒素と一緒に有機物(米糠など)を土に混和して、【太陽熱】+【石灰窒素と水の反応熱】+【有機物の分解による発酵熱】で地温を上昇させて熱消毒する方法です。
ちなみに、センチュウは40℃以上で24時間、45℃以上で4時間で死滅するとされています。
土壌還元消毒とは
有機物の分解過程で土壌中の酸素が消耗されることを利用して、土の中を無酸素状態(還元状態)にしてセンチュウや病原菌を死滅させる方法です。地表から新たに酸素が取り込まれないよう、透明ビニールで覆う必要があります。
石灰窒素と一緒に分解されやすい有機物(米糠など)を土壌に混和すると、有機物をエサに土の中の微生物が爆発的に増殖します。増えた微生物は酸素を大量に消費しながら有機物の分解や、さらなる増殖を繰り返すため、やがて土の中が無酸素状態になります。酸素がないと生存できない菌や微生物は、これによって駆除されます。
さらに微生物が有機物の分解で発生させる酢酸や酪酸、還元されて土に溶け出す金属(鉄やマンガンなどの金属イオン)は強い抗菌作用で知られていて、この作用でも病原菌を駆除することができます。
ちなみに、有機酸や溶け出した金属による抗菌作用は、土壌還元消毒後に被覆していたビニールを剥がして土に空気を取り込むと影響のないレベルにリセットされるため、作物への影響もありません。
土壌還元消毒は、太陽熱消毒よりもやや低い温度でも効果を表します。目安は地温30℃以上で2週間から3週間程度です。
石灰窒素の使用上の注意
石灰窒素は人間や環境にやさしい資材ですが、初期の段階では殺虫・殺菌作用をもつ農薬です。最後に、石灰窒素を使用する際の注意点について紹介します。
施用後は直ぐには植え付けられない
石灰窒素の殺菌・殺虫成分シアナミドは、作物にも影響を及ぼします。完全に分解されて肥料に変わるまで種蒔きや植え付けができないため、注意が必要です。
シアナミドが分解されるまでの期間は、地温に大きく関係します。
- 春・秋期 7~10日
- 夏期 3~5日
余裕をみて、種まきや植え付けの2~3週間前には、土への混和を終えておくと安心です。
元肥の成分や量に注意
石灰窒素は、土壌の殺菌・殺虫や土作りに加えて、肥料そのものにもなる資材です。
その名の通り、石灰と窒素が高い濃度で含まれるため、土作りや元肥は、石灰窒素に含まれる肥料成分も計算して、資材の種類や量を決めましょう。
窒素成分
石灰窒素の窒素成分は20%。土壌微生物による窒素の消費量を考慮しても、一般的な化成肥料に含まれる窒素8~10%程に比べると、かなり高い濃度で含まれます。
一方で、必須三要素のリン酸、カリウムは含まれず、その他の要素も足りないため、石灰窒素のみでは作物は育ちません。
元肥を入れる時は、リン酸、カリウムなどの単肥や、窒素比率の低い複合肥料を選ぶようにしましょう。
有機質肥料を使用する場合は、草木灰が窒素を含まず、リン酸、カリウムの多い資材になります。ただし次に説明するように、カルシウムの含有量が高い肥料のため、土壌のpHバランスに注意しながら施肥する必要があります。
■窒素が過剰になるとどうなる?
窒素は、植物に欠かすことのできない成分ですが、必要以上に与え過ぎると野菜が軟弱に育ち、病気にもかかりやすく、トマトやナスなどの実物野菜では十分な収量が得られなくなる場合もあります。また、過剰に摂取された窒素は葉に蓄積され、舌がピリピリするようなエグ味が出たり、食べるとニトロソアミン(発がん性の疑い)やメトヘモグロビン(酸素欠乏症の要因となる)などを体内で生成させたりする恐れもあり、人間にとっても良いとはいえません。
アルカリ成分
石灰窒素のアルカリ成分は約60%。苦土石灰よりも強く、酸性をアルカリ性に矯正するpH調整力は消石灰並みです。土壌がアルカリ性になると、土が固くなり、植物が必要な微量要素を吸収できなくなることも…
石灰窒素の投入後は、基本的には苦土石灰などによる酸度矯正は不要です。また、鶏糞や草木灰などの窒素・リン酸・カリウムの供給を目的として入れる有機質資材にも、カルシウム(アルカリ成分)の含有率が高いものもあるため、施肥量には注意してください。
湿気を避けて保存
石灰窒素の有効成分シアナミドの分解は、水と反応しておこります。
余った石灰窒素は、袋をしっかり縛って、高温多湿や直射日光を避けて保存しましょう。また、吸湿性の高い肥料(尿素など)と混ぜ合わせた場合は、放置しないで直ぐに使うようにしましょう。
アンモニア性窒素と同時施肥はダメ
石灰窒素は強いアルカリ性のため、アンモニア性窒素(硫安、塩安など、またこれらを成分を含む複合肥料)と混合すると、アンモニアガスを発生させます。アンモニアガスは植物にとって有害で、さらに、せっかくの窒素成分が植物に供給でずにガスとして抜けてしまうため、同時施肥は避けましょう。
なお、一緒に施肥しても問題のない肥料は、次の通りです。
ようりん、珪酸石灰肥料、炭酸カルシウム、消石灰、硫酸カリ、塩化カリ、珪酸カリウム、骨粉、草木灰、魚かす、油粕など
人体の影響にも注意
石灰窒素の農薬成分シアナミドは、使用方法を誤ると人体にも影響を与えます。
- ・散布するときは、吸いこまないようにマスクを着用しましょう。また、皮膚に直接触れると炎症をおこすこともあるため、必ず手袋を装着し、長袖の服で作業しましょう。
石灰窒素には粒状タイプと粉状タイプがありますが、粒状タイプの方が風で舞い上がることもなく安心です。 - ・石灰窒素が体内に吸収されると、人によってはお酒に酔いやすくなります。石灰窒素を扱った日は、飲酒を控えるようにしてください。
石灰窒素は、環境への負荷がすくなく、土壌消毒から土作り、植物の肥料にまで使えるとても有益な資材です。特性をよく理解して、上手に野菜作りに活用しましょう。
参照)日本石灰窒素工業会
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