アブラムシの効果的な駆除方法|牛乳や石鹸は効く?安全な駆除剤を紹介

新芽や葉の裏側にびっしりと付いたアブラムシ…

大切な野菜にアブラムシの大群を見つけたときには、絶望的な気持ちになりますよね。

まず、見た目が気持ち悪い…

だからといって、そのまま放っておくとどんどん増えて、葉が奇形になったり、花や実をつけることができなくなったり、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。

アブラムシは、家庭菜園をしていると必ずといってよいほど経験する、野菜につきやすい害虫です。そのため民間療法的なものから農薬まで、さまざまな駆除方法が知られています。

でも、それらの駆除方法は、本当に効果的なのでしょうか?

今回は家庭菜園にお勧めのアブラムシの駆除方法と、アブラムシの被害にあわないための対策を、農家としての目線から紹介します。

アブラムシはどんな虫?

そろそろ夏野菜の準備を始めようかな…

桜の蕾も膨らむ春めいた陽気の中、新シーズンへ向けての準備を進めているのは私たち人間だけではありません。

アブラムシは3月下旬ごろから、ポツリポツリと姿を見せ始めます。

アブラムシは直径1~2㎜程度の、赤や緑の色をした小さな虫。寒さに弱く、寿命も1か月程度しかありませんが、晩秋に産み落とされた卵が気温が20℃程度に暖かくなると孵化して、植物に寄生します。これが春に発生するアブラムシです。

驚異的な繁殖力をもち、たった1匹のアブラムシが、1か月後には10,000匹以上に増えるともいわれています。

世界で確認されているアブラムシは、4000種以上。その中でも、野菜につく害虫としてモモアカアブラムシやワタアブラムシなどが有名です。

虫としての分類は、セミやカメムシと同じ仲間で、針のように長く尖った口を植物に突き刺して養分を吸い上げます。アブラムシが野菜につくと、バッタのような穴ボコの虫食いにはなりませんが、栄養を吸い取られて枯れてしまう場合があります。

農家にとっても、アブラムシは駆除しにくい厄介な害虫で、例年大きな悩みの種となっています。

アブラムシの驚異的な繁殖力

アブラムシは一匹一匹がとても小さく、野菜の汁を吸うだけの弱い虫です。テントウムシのようにアブラムシを餌にする天敵も多く、表皮が柔らかく動きも鈍いため直ぐに捕食されてしまいます。

でも、この弱いアブラムシが自然界で絶滅することなく、毎年のように野菜に被害をあたえるのは、子孫を残していくための生存戦略が驚異的に凄いからです。

特筆すべきは、単為生殖で増える点と、翅アリと翅ナシ、メスとオス、卵と幼虫とに状況に応じて産み分けることができるという点です。

単為生殖で増える

アブラムシは、基本的に単為生殖という方法で繁殖します。交尾をしないで、1匹のメスだけでクローンを作るかのように子どもが産めるのです。しかも、子どもは卵ではなく、幼虫の姿で生まれてきます。

たまこ
たまこ

ふつう、虫は卵で産まれてくるでしょ?

ぴっこ
ぴっこ

お母さんのお腹の中で、卵からかえるの
手足も口も、自由に動く状態になってから外に出てくるのよ!

他の虫や動物では考えられないくらいに、効率的かつスピーディに子どもを増やせるのです。

生まれてくるのはメス

生まれてくる幼虫は、基本的に、全て子どもを産むことができるメスです。
驚くことに、このメスの幼虫たちは、生まれてくる前から既にお腹に卵を宿しています

ぴっこ
ぴっこ

アブラムシのお母さんは、自分の子どもと、さらに孫まで一緒にお腹の中に身ごもっていということ!
アブラムシ母、最強すぎ!

アブラムシの幼虫が成虫になるまでは、わずか10日ほど。成虫になると、毎日3~5匹程度の子どもを産み続けます

その子ども達がそれぞれ、生まれたときからお腹に卵を宿していて、成虫になると毎日子供を産み続ける…さらに、その子どもが…というように数が倍々と増え続け、短期間で爆発的な数になるのです。

「アブラムシが1匹いると、一か月後には10000匹になる」ともいわれています。

ぴっこ
ぴっこ

野菜の葉や軸を巣にして、あっというまにメス中心の大家族ができる!

有翅の子どもも産める

基本的に、アブラムシは飛ぶことも跳ねることもできないため、遠くの場所への移動ができません。生まれた株の周辺で一生を過ごし、子どもを産み続けます。

そのアブラムシが、なぜ離れた畑のあちらこちらで群発するのかを知っていますか?

実はごく一部に、遠くに飛べる翅があるアブラムシが存在するからです。

1つの株の中だけで数が増え過ぎるのは、生存戦略としては賢いとはいえません。

・食糧が足りなくなる…
・天敵がきたり、環境の変化で全滅してしまうかもしれない…
などの理由です。

そこで、数が増えて大家族になると母アブラムシは、移動ができる翅のはえた子ども生みますこの子アブラムシが、新たな繁殖先を開拓すべく巣から飛び立ち、新天地で新しく大家族を築き上げるのです。

交尾すると卵も産める

アブラムシは寒さに弱く、そのままの姿では冬を越すことができません。

でも、卵なら寒さに強く、越冬も可能です。

通常、アブラムシは交尾もしなければ、卵も産みません。メス1匹だけで繁殖する単為生殖で、お腹の中で幼虫にまで育ててから産み落とすのです。

ところが、冬の寒さが近づくとオスと交尾をします。
交尾をすると、子どもを卵で産むことができるからです。

平時にはメスの子どもしか生まないアブラムシですが、晩秋になると交尾のためにオスの子どもを産みます。そしてオスとメスが交尾をして卵を残し、気温が暖かくなる春を待って孵化した子孫たちが、再び繁殖を繰り返すのです。

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アブラムシはどんな害を引き起こす?

アブラムシの主な被害は、野菜が栄養を吸い取られることにより、生長が阻害されてしまうことです。アブラムシ数匹程度では大きな問題にはなりませんが、爆発的に増えるて、大勢で一斉に吸われると株が弱って枯れてしまう場合もあります。新芽につきやすいため、花や実の付きにも影響します。

また、葉に虫こぶと呼ばれる、コブ状のボコボコした奇形を生じさせることもあります。

さらに、アブラムシの寄生が原因で二次的な被害が発生することもあります。

モザイク病

アブラムは、野菜に針状の細い口を突き刺して養分を吸い取ります。病気に感染している野菜を吸った後に次の野菜に口を刺すと、その野菜も病気に感染してしまいます。

このように、アブラムシは野菜から野菜へ病気を伝染させる運び屋になることもあります。

特に被害が多いのがモザイク病というウイルス性の病気です。葉にモザイクのようなまだら模様が現れて、株全体が委縮し生長が悪くなります。進行すると、株が弱り枯れてしまうこともあります。

モザイク病には治療できる薬剤がなく、他の野菜への蔓延を防ぐため、発症したら株ごと抜き取り処分するしかありません。

すす病

アブラムシは、お尻から糖分を多く含むベトベトとした排泄物を出します。この排泄物が葉や茎に付着するとカビが増殖し、すす病を発症します。表面が黒いすすのように見えるカビで覆われるため、葉の光合成や新陳代謝が悪くなり、重度の場合は枯れてしまうこともあります。

アブラムシを寄せ付けないための対策

葉の裏や軸にびっしりと寄生した数十匹、数百匹のアブラムシも、おそらくたった1匹のアブラムシから繁殖したものです。

この最初の1匹は、どこからか飛んできた翅のついたアブムシです。

ぴっこ
ぴっこ

ほとんどのアブラムシは翅をもたないけど、中には翅があって飛ぶことのできるアブラムシもいるの

ブラムシの発生を防ぐための対策は、この飛んでくる有翅のアブラムシが野菜に降り立てないようにすることです。

アブラムシの防除でよく使われる資材には次のようなものがあります。

・防虫ネット
・シルバーマルチ
・黄色の粘着シート

これらについて、一つ一つ解説していきます。

防虫ネット

防虫ネットをはることは、飛んでくる害虫の株への寄生を阻止する最もシンプルで効果的な方法です。アブラムシ対策としても有効です。

ただし、アブラムシは小さいため、目が非常に細かいネットを使わなければ効果が期待できません。一般なものより目が細かい0.6㎜ネットでも、わずかながら侵入してくるアブラムシはいる様子です。完全に阻止したいのなら0.4㎜程の微細なネットが必要になりますが、通気性を妨げてしまうため野菜によってはお勧めできない場合もあります。

シルバーマルチ

アブラムシは、キラキラと光を放つものを嫌います。

マルチとは野菜を植える土の上を覆うビニールのシートのことで、黒色が一般的ですが、シルバーマルチは光を反射する銀色をしています。

アブラムシは飛ぶときに、背中に注ぐ太陽の光で上下を認識して、平衡感覚を保っています。野菜の下にシルバーマルチが敷かれていると、空以外の方向からも光を感じるため、攪乱して野菜を目がけて飛んだり、上手く降り立ったりすることができなくなるのです。

シルバーマルチは小さなプランターの場合は、アルミホイルなどでも代用できます。また株の傍に、ビールの空き缶などのような、キラキラと光を反射するものをぶら下げておくのも効果があるといわれています。

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黄色の粘着シート

粘着シートは野菜の傍に設置しておいて、飛んできたアブラムシを野菜に降り立つ前に捉えてしまうというものです。

防虫用の粘着シートはホームセンターや100円ショップでも売られていて、黄色や青色、緑色などがありますが、飛んでくるアブラムシには黄色に引き寄せられやすいとされています。

ちなみに、粘着シートは飛翔害虫に効果的で、すでに野菜に寄生してしまったアブラムシにはそれほど効果はありません。

風通しが悪いとアブラムシがつきやすい

飛来してくるアブラムシを株に寄生させないためには、こうした防除資材に加えて、株を風通し良く剪定しておくことも重要です。
アブラムシは、風にのって飛んできます。ぼうぼうに繁って風通しが悪い状態だと、アブラムシを捉えてしまう可能性が高くなるのです。

ただし、防除資材や風通しなどは、あくまでもアブラムシがつく確立や頻度を下げるものにすぎず、被害を完全に防げるものではありません

アブラムシを早期発見する方法

アブラムシは一匹一匹は小さく弱いため、数匹が寄生した程度では植物への影響はほとんどありません。生育不良や病気につながるのは、繁殖を繰り返して大集団になったときです。

前の項目で防除資材を紹介しましたが、アブラムシはどこにでも発生する虫なので、土に殺虫剤を入れるなど農薬の力を頼らない限りは、結局のところ寄生を完全に防ぐことはできません。家庭菜園では、むしろ防げないと思っていた方が賢明です。

大切なことは、たとえ野菜にアブラムシがついても、株の中で繁殖させないということです。

アブラムシの幼虫が成虫になって、次の子どもを産むまでが約10日間。以降、毎日子どもを産み続けることを考えると、最初のアブラムシがついてから2週間以内で発見し、駆除できれば、大きな被害にはなりません。

発見が遅れて大家族を作ってしまった後では、翅のあるアブラムシが生まれて、周囲の野菜へも拡散している可能性があります。

とにかく、早期発見、早期駆除がアブラムシ対策では重要なカギとなります。

でも実際には、アブラムシは葉の陰や裏側に隠れて姿が見えにくいことも多く、大量増殖してから初めてアブラムシの存在に気が付いた…という人も多いようです。

早期発見の大切さは理解していても、生茂った葉を一枚一枚チェックしていくというのも現実的ではありません。

たまこ
たまこ

毎日のお世話でも、葉の裏側なんていちいちチェックしないもんね…

ぴっこ
ぴっこ

アブラムシを探そうとするよりは、何か調子悪い…という野菜の出すサインを見落とさないようにすることが大切なの

ここで、アブラムシが発生しても早期に発見できる、日々のチェックポイントについて紹介します。

  1. 生長点に奇形、変色がないかをチェック
  2. アリが増えたら要注意

アブラムシが最も寄生しやすい場所は、野菜の生長点です。

アブラムシは、アミノ酸が大好物です。このアミノ酸は、肥料成分である窒素から作られる栄養成分で、野菜では細胞分裂が活発な生長点に集中します。そのため、アブラムシは生長点を好んで寄生するのです。

また、植物の下の葉も狙われやすい場所になります。
アブラムシは、口にある針を植物に突き刺して養分を吸い上げますが、抵抗力が衰えた古い葉は針を刺しやすく寄生しやすいのです。

この生長点などを中心に、葉が変形している、色が悪い、生長に勢いがないなどの不調のサインが出ていないかを日々チェックし、不調を感じたら直ぐに葉の裏側や周辺を確認するようにしましょう。普段から意識していると、アブラムシがついても早期で発見できるようになりますよ。

例えば、このバジル。
生長点付近に縮れたような変形が出たため葉の裏を確認すると…

縮れた葉に2匹のアブラムシを発見。
このレベルで見つかれば、駆除も簡単です!

また、アリを頻繁に見かけるようになった場合にも、アブラムシの存在を疑いましょう。

アブラムシとアリは共生関係にあります。野菜にアリが群がっていたら、その先にアブラムシが増殖しているかもしれません。

アブラムシはお尻から糖分を含む甘い汁を出します。アリこれが大好きで、汁を求めて行き来するようになり、さらにアブラムシが他の外敵から襲われないように護衛もつとめます

ぴっこ
ぴっこ

アリを味方につけたアブラムシは、捕食される心配もなくなって、どんどん増えていくの

アブラムシの効果的な駆除方法

アブラムシを見つけたら、たとえ数匹でもすぐに駆除しましょう。油断すると増殖して、手に負えなくなってしまいます。
まずは、農薬を使わない駆除の方法について、少しお話ししたいと思います。

基本は手で駆除

アブラムシは、発生初期なら手で取り除くのが一番です!簡単で、確実に駆除できます。

ピンセットで摘んで採る、ガムテープなどの粘着テープを使ってペタペタ取るなど。

水で洗い落とすという人もいますが、アブラムシは水では死にません。流れていったと思っても、案外どこかにしがみついていて、しばらくすると野菜にもどってきてしまうこともあります。

もし、「洗い流したい」と思うくらいに大量についてしまった場合は、水ではなくアブラムシを駆除できる液体を使うことをおすすめします。

牛乳や石鹸水は効く?

農薬を使用しないアブラムシの駆除の方法としては、牛乳や石鹸水をスプレーで吹きかける方法が良く知られています。

家庭菜園では、「身近なものを使う方が何となく安心できる」という方も多いのではないでしょうか?

でも、プロの農家目線からいえば、石鹸水や牛乳は2つの理由からお勧めできません

1.安全性の問題

そもそも、石鹸は食品に散布する目的では作られていません。野菜に吹きかけて良いわけがありません!

また、牛乳も散布して放置すれば悪臭が発生し、雑菌も繁殖するため、食品である野菜に使用することは安全とはいえません。

2.アブラムシへの殺虫効果と、野菜への影響

石鹸水も牛乳も、効果がないわけではありません。
でも、アブラムシを根絶させるほどの効き目は期待できません

例えば、100匹のアブラムシにスプレーをかけて、半分の50匹を駆除できたとしても、生き残りの50匹が子どもを産めば、再び100匹を軽く超えてしまいます。アブラムシの成虫は、毎日3~5匹程度の子どもを産むのです!

アブラムシの駆除目的で使うなら、「多少は駆除できる」のではなく、根絶を狙わなければ意味がありません

実際に、効果の薄い駆除液を散布するくらいなら、ガムテープなどで一気に取り除いた方がよっぽど効果的です。

また、石鹸水も牛乳も水で薄めて液を作りますが、濃度が薄いと全く効果がありません。特に石鹸は製品によって成分が異なるため、適正な希釈度で液を作ることは困難です。液が濃すぎた場合は、葉や茎に障害がおこり植物にダメージを与えることになります。

実は、石鹸水や牛乳は、どちらも気門を封鎖してアブラムシを駆除しようとするものです。

気門とはアブラムシが呼吸をしている穴で、ここを液の膜で覆ってしまい窒息死させるというものです。石鹸水は界面活性剤、牛乳はタンパク質でアブラムシの気門を封鎖します。

デンプンなどを使っても、全く同様にアブラムシを窒息させることができます。

デンプンも油も、牛乳と同じく食べられるものですが、害虫を駆除する目的で作られたものが天然由来成分の「農薬」として販売されています

牛乳の液と「天然由来成分」農薬との違いは?

農薬かどうかの基準は、農薬取締法に基づき安全性や効果が確認されているか確認されていないかの違いです。

厳しい検査を通過して認定されたもののみが「農薬」として名乗ることができるのです。

牛乳と農薬との違いは、天然由来成分か化学合成成分かではありません。

ぴっこ
ぴっこ

例えば、アブラムシの天敵として知られるテントウムシが「農薬」として販売されているのよ

牛乳は、アブラムシの防除剤として民間療法的に使われてきた実績から、一般の登録農薬とは違う枠組みの特定農薬(特定防除資材)への指定が検討されましたが、効果面などから認定保留になっています。

天然由来系のアブラムシ農薬とは?

「農薬」として登録されているものでも、アブラムシへの殺虫効果が認められているものには2通りがあります。

1つ目は毒で殺す。

これは「農薬は危険」と嫌煙する人たちがもつイメージの通りの、農薬ではないでしょうか?

アブラムシにとって毒となる成分で、神経などをマヒさせて殺すものです。蚊取り線香に使われる除虫菊の成分のような天然由来のものもありますが、化学合成の殺虫成分が主になります。家庭菜園用として販売されているものでは「オルトラン」や「ベニカXファインスプレー」などが、この類の農薬です。

2つ目は窒息させて殺す。

アブラムシを膜で覆って呼吸を阻害することで殺す、気門封鎖剤と呼ばれるものです。

牛乳や石鹸水は、これと同じ作用を狙ったものです。
自然由来成分で農薬として販売されているものでは、でんぷんで気門を封鎖する「粘着くん」石鹸と同じように脂肪酸系のものでは「アーリーセーフ」(サンクリスタル乳化剤)などが家庭菜園でも使いやすく販売されています。

これらは神経に作用する毒で殺すのではなく、物理的な作用で窒息させるもので、安全性が高く有機栽培でも使用することができます。

毒で殺す化学合成農薬に抵抗がある方には、これらの気門封鎖剤がおすすめです。

ただし、「粘着くん」も「アーリーセーフ」も100倍や300倍など使用方法に応じて希釈して必要があります。もしも、濃度を間違えると植物が障害を起こしてしまうこともあります。
また、毒で殺すタイプの農薬の多くは1回の散布で効果がしばらく持続しますが、気門封鎖タイプの農薬はアブラムシに直接かからなければ効果がありません。そのため、何度か散布を繰り返す必要がありますが、その度に希釈液を作るのは少し面倒です。

家庭菜園用に、より安全かつ手軽に使えるように、希釈された濃度でスプレーボトルになった商品が販売されています。自分で希釈して使うタイプのものよりは割高にはなりますが、農薬には使用期限があるため、小規模で栽培している方にはむしろこちらの方がムダがなく経済的です。

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「アーリーセーフ」の有効成分と似た構造をもつ、ココナッツ油に含まれるカプリン酸グリセリルが有効成分の気門封鎖剤です。カプリン酸グリセリルは乳化剤としてパンやアイスクリームなどの食品に広く使用されている成分です。

アブラムシ以外にも、コナジラミやハダニ、さらにアオムシなどにも効果があり、牛乳液などに比べて圧倒的な即効性と駆除効果があります。

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「粘着くん」のように、デンプンを水飴状にした気門封鎖剤です。
食品成分由来で、有機農業にも使える安全性の高い農薬です。アブラムシ以外にもコナジラミ、ハダニなどに効果があります。

アブラムシ対策に木酢液は有効?

自然派のアブラムシ対策として、木酢液も人気です。

木酢液とは木炭を作るときにでる水蒸気や煙を冷やして液体にしたものです。スモーキーな香りと、強い殺菌効果で知られ、天然由来ということで無農薬で栽培したい人などに根強く支持される資材です。

木酢液は、アブラムシを直接的に殺す殺虫剤ではありません。木酢液を野菜に散布することによって、特有の匂いで虫を寄せ付けにくくすることに加え、野菜が健康に育つため虫が寄生しにくくなるといわれています。特にアブラムシは、細胞が弱い軟弱に育った野菜につきやすい害虫のため、木酢液は効果的とされています。

実は、この木酢液の防除資材が、1970年代に農薬として登録されていたことがあります。でも、今は農薬としての登録が失効しているため、安全性については自己責任になります。牛乳と同様に特定農薬(特定防除資材)への指定も検討されましたが、ホルムアルデヒドが含まれるなどの理由から保留になっています。

木酢液を否定するわけではありませんが、木酢液の成分は原料や製造方法によって大きく異なり、人体に悪い影響を及ぼすタールやホルムアルデヒドなどが生成されることでも知られています。これらを除去した安全で良質な製品を出している業者さんはもちろんありますが、農薬ではないため規制がなく、市場には粗悪な製品も混在しています。そして良品か粗悪品かを、消費者が見分けることは極めて困難です。

天然成分で「農薬よりも安全そう」というイメージの木酢液ですが、こうした理由から個人的にはあまりお勧めはできる資材ではありません。もし使う場合にも、値段が安すぎるものは控えた方が無難です。

まとめ

アブラムシは短期間で爆発的に増殖する、とても厄介な害虫です。このため、確実な効果を狙える駆除方法を選ばなければ、被害をおさえることができません。

農薬を「危険なもの」と毛嫌いして、台所にある身近なものを使用するという方も多いようですが、安全性や駆除効果を考えると、牛乳や石鹸水を使った方法が良いとはいえません。

実は、「農薬」として登録されているものにも牛乳と同じように食品由来で、化学合成成分が不使用のものもあり、安全性に関しての厳しい審査もクリアしています。

また、天然由来の成分の駆除液でも、濃度が適正でなければ野菜に障害をおこすこともあります。このため、特に家庭菜園の初心者の方には、予め適正な濃度に希釈されたスプレータイプの駆除剤がお勧めです。

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