ゼンターリ顆粒水和剤の使い方|BT剤は安全?アオムシやヨトウムシへの効果は?

ゼンターリ顆粒水和剤BT剤といわれるものの1つで、チョウやガの幼虫を駆除するための、農薬取締法によって登録されている農薬です。
BT剤は化学合成された殺虫剤ではなく、自然界で普通に存在している菌で作られた生物農薬で、人間はもちろん、他の昆虫や生態系にもほとんど影響することはないといわれています。そのため、安全性の高い自然由来の農薬として、有機栽培にも使用が認められています。

でも、「安全」といわれても、農薬は農薬。

虫を殺す成分を野菜に散布するのは不安な気持ちになりますよね…

そこで今回は、ゼンターリ顆粒水和剤をはじめとしたBT剤が安全とされる理由について解説します。また、BT剤を効果的に使用するための注意点や、家庭菜園にも使えるゼンターリ顆粒水和剤の散布液の作り方などについても紹介します。

虫を殺すBT剤は、人間にも危険?

BT剤にかかわらず、農薬として販売されている全ての殺虫剤は選択毒性を利用しています。選択毒性とは、ある特定の生物に対してだけ強く作用する毒性のことです。

例えば、犬や猫にチョコレートを食べさせると、健康を害する恐れがあります。カカオに含まれるデオブロミンという成分には興奮作用や強心作用などがあり、犬や猫はこのデオブロミンを分解・排出する機能が非常に低いためです。人間も食べ過ぎはダメですが、カカオには集中力を高めたり、自律神経を整えたりする効果もあり、薬としても珍重されてきた食品です。でも、犬や猫にとっては板チョコ1、2枚程度でも命に係わる重篤な中毒につながることもあります。つまりチョコレートの成分は、選択制のある毒なのです。

農薬はこのように、昆虫と、人間や哺乳類との解毒作用や生理機能の違いなどを利用して、特定の昆虫のみに効果を発揮する成分が使われています。

そのため「虫を殺すから、人間にも同じように危ない!」とは、ならないのです。

ぴっこ
ぴっこ

確かに、1970年頃までは、害虫に効果抜群!人や生態系にも甚大な影響…!!!の農薬も存在していたの…

でも、今は農薬取締法が改正され、このような危険な農薬は作ることも、売ることも、使うことも許されなくなったのよ

BT剤は生物農薬

BT剤は、化学合成された殺虫剤ではありません。

もともと自然界に存在している微生物の働きによって害虫を駆除する生物農薬で、選択毒性が大きくチョウやガの幼虫以外にはほとんど影響しないといわれています。

農薬は、有効成分の違いから化学農薬と、BT剤のような生物農薬に分けることができます。

生物農薬は、化学農薬に比べて標的以外の生物に影響が少ないものが多く、環境への優しさから世界中で注目されています。特にBT剤は世界で一番使用されている生物農薬で、アメリカでは半世紀以上もの使用実績があります。

BT剤は、バチルス・チューリンゲンシス(BT)というバチルス属に分類される菌の胞子とタンパク質を結晶化したものです。

チョウやガの幼虫の体内に入ると、BT剤が消化液に溶け出し、さらに消化液の中の酵素の働きで活性化されて毒素を作ります。この毒素の攻撃で幼虫はお腹を壊し、食べることができなくなって衰弱死するのです。

BT剤は人間に安全なの?

「体内で毒素を作る」と聞くと、それだけで怖いって感じますよね。

でも、BT剤は全ての生物に対して毒として働くわけではありません。

簡単に言えば、BT菌はチョウやガの幼虫の消化管との「相性が良い」微生物で、それ以外の生物とは相性が一致しないため活性化されず、毒素も出しません。

人間とチョウやガの幼虫とでは、消化のメカニズムが全く違います。チョウやガの幼虫の消化液はアルカリ性ですが、人間の消化液は胃酸などでも知られるように強い酸性。BT剤はアルカリ性の消化液にのみ溶け出して毒素を作る性質があります。このため、酸性の消化液をもつ人間の体内では、毒としは働かないのです。

また、もし消化液がアルカリ性だったとしても、消化器官内に活性化したBT菌を受け止めることのできる相性の良いレセプターが存在しなければ毒は効きません。そのため、他の生物たちにも安全性が高いといわれています。

安全」と言われても…

目には見えない殺虫性をもつ微生物に対して、漠然とネガティブなイメージを抱く方も多いかと思います。BT菌を敢えてイメージしやすく説明すると、バチルス・チューリンゲンシス菌は納豆菌の親戚です。どちらもバチルス属というグループの微生物で、自然界ではごく普通に存在しています。

BT剤に使われるバチルス・チューリンゲンシスは、土の中や昆虫の排泄物、植物の表面などにもすんでいます。このため、有機農業にも使用が認められ、自然由来の安全性の高い薬剤として世界中で評価されています。

ぴっこ
ぴっこ

自然界では特定の生物が増え過ぎることがないように、それぞれに天敵となる昆虫や微生物などが存在してバランスを保っているのよ

BT菌は、チョウやガに対して天敵となる微生物なの

BT剤はどのように作用する?

少し難しい言い回しになりますが…BT剤はアルカリ性の消化液という条件下で、たん白分解酵素の働きによって毒素が活性化され、相性の良いレセプターをもつ細胞と毒素とが結合することで消化管を破壊します。

アルカリ性の消化液、毒素と結合できるレセプターなど、BT菌にとって「相性の良い」消化管をもつのがチョウやガの幼虫です。

チョウやガの幼虫がBT剤の付いた葉を食べると、2~3時間後には毒素の働きでお腹をこわし、それ以上は何も食べられなくなります。そして2~3日程度で全体に毒素が回り、衰弱死します。

このように、BT剤には化学農薬のような即効的な殺虫効果はなく、害虫が死ぬまでには数日かかります。ただし、毒素が効いていれば数時間以内に食べることができなくなるため、食害そのものは直ぐに止めることができます。

ゼンターリ以外にも!種類が豊富|BT剤の選び方

「ゼンターリ顆粒水和剤」はBT剤の商品名で、BT菌を用いた農薬は他にも多数販売されています。また、それぞれの商品ごとに、殺虫作用に多少の違いがあります。

BT菌そのものも1種類のみではなく、世界では40種類以上の系統が発見されていて、それぞれの系統ごとに「相性の良い」昆虫や、殺虫力などが異なります。日本で農薬に使用されているBT菌は、アイザワイ系クルスターキ系と呼ばれる主に2つの系統のもので、どちらもチョウやガの幼虫に対しての殺虫作用をしめすものです。欧米ではハエやカの仲間に効く系統や、コガネムシの仲間に効く系統も実用化されており、「BT剤」といっても様々です。

さて、クルスターキ系アイザワイ系では「相性の良い」チョウやガの種類が少し違います。

  • クルスターキ系   アオムシオオタバコガコナガなどが得意
  • アイザワイ系    ヨトウムシアワノメイガなどが得意

ちなみに、家庭菜園用に販売されているゼンターリ顆粒水和剤は、アイザワイ系のBT剤です。ゼンターリ顆粒水和剤はチョウやガの幼虫に全般に対して広く作用性をもち、アオムシに対しても効果がないというわけではありません。

ただし、駆除したい害虫がアオムシに限定されている場合には、クルスターキ系のBT剤を使う方が、より効果的です。クスルターキ系のBT剤は、エスマルクDFチューンアップ顆粒水和剤などです。

また、両系統の混合したBT剤、バジレックス水和剤も販売されています。

カラー写真を豊富に使って症状別・病気別・害虫別・植物別に紹介しています。野菜栽培で頼りになる一冊。
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ゼンターリ顆粒水和剤の使い方

ゼンターリ顆粒水和剤の袋の中には、BT菌の胞子とタンパク質を結晶化させた粒が入っています。これを水で溶かして薄い液を作り、スプレーボトルなどに入れて野菜に吹きかけます。

ゼンターリ顆粒水和剤に限らず、こうした水和剤を水に溶かして薬液を作るときには、展着剤を一緒に加えます。野菜の葉には水を弾く性質があるため、薬液をそのまま散布しても流れ落ちてしまいますが、展着剤が薬液と葉とをくっつけるのりのような役割をしてくれます。また、雨にあたっても、流亡しにくくなります。
多くの展着剤は容量の多いボトルで販売されていますが、ダイン(住友化学園芸)は家庭菜園用に小さなボトルで販売されていて、価格も安くお勧めです。

ぴっこ
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展着剤は一度に数滴しか使わないから、これで十分!

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ゼンターリ顆粒水和剤は、作物や駆除した害虫の種類に応じて、1000倍~2000倍に水に溶かして散布します。家庭菜園用に販売されているSTゼンターリ顆粒水和剤には、箱の中に1gを計量できるスプーンが付属されています。今回は、この計量スプーンを使用して、1000倍のゼンターリ散布液1ℓを作る方法を紹介します。

希釈液の作り方

必ず【水】→【展着剤】→【ゼンターリ顆粒水和剤】の順番で容器に入れて、その都度混ぜ合わせます。この順番が違うと、十分な効果を発揮することができません。
また、安全性の高い薬剤ではありますが、使用するときには手袋やマスクを装着するようにして、皮膚に直接触れないように注意しましょう

  1. スプレー容器に1ℓの水を入れる。
  2. 所定量の展着剤を入れてよく混ぜ合わせる。
    ※展着剤にダインを使用する場合は水1ℓに対して、スポイトで4~5滴程
  3. ゼンターリ顆粒水和剤をスプーン1杯(1g)入れてよく混ぜ合わせる。
  4. 葉の表裏にしっかりかかるように散布する
    特に、チョウやガの卵は葉の裏に産み付けられ、幼虫も葉の裏にいることが多いため、裏側には念入りに!

BT剤の注意点

BT剤は孵化したばかりの若齢期の幼虫には良く効きますが、サナギになる間近まで成長した老齢幼虫には作用が低い薬剤です。そして、成虫には効きません。もし、BT剤を散布しても食害が止まらない場合は、幼虫が既に大きくなり過ぎているか、またはBT剤が効かない昆虫による加害の可能性が高いとみるべきで、別の駆除方法を検討した方が良いでしょう。

ぴっこ
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BT剤が効いたなら、その日のうちに食害はとまるはず!

また、BT剤は葉や茎への浸透性移行性は無いため、効果は長く続きません。一般的には1週間程度、条件がよければ2週間程持続することもあるとされていますが、雨が続けば流れて効果が早くなくなります。さらに紫外線の影響を受けやすく、散布後に晴天が続くと効果が低下します。そのため、徹底的に駆除したい場合には、1週間から2週間間隔の繰り返し散布が必要です。


一般的な化学農薬は、それぞれの商品ごとに使用できる野菜が限定され、栽培期間中に使える回数にも制限があります。一方で、ほとんどのBT剤は、野菜類全般で使用することができ、回数制限もありません。

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安全な農薬とは?

BT剤は、自然界に普通に存在する微生物を利用したもので、安全性が高い農薬といわれています。

でも、解明されていないメカニズムもまだまだ多く、あくまで「一般的な化学農薬と比較して、人間や自然環境への安全性が高い」というものです。

さて、化学農薬を使い過ぎは、その薬剤に対しての抵抗性をもつ、駆除が難しいスーパー害虫を出現させてしまいます。生物農薬であるBT剤は、こうした抵抗性をもつ害虫を生み出しにくいとされていましたが、実はBT菌に抵抗性がついたコナガの出現が確認されています。

また、当初はミツバチに影響がないとされていましたが、アイザワイ系のBT剤の使用で慢性的な影響を与える可能性があることが指摘されるようになりました。

ただし、害虫の抵抗性についても、ミツバチへの影響についても、既に影響が顕著になっている化学農薬と比較すると、今のところは軽微なものです。

農薬に限ったことではありませんが、「絶対的な安全」というものは、そもそも存在しません。人間によって解明されていることは、自然の中のごく一部分の事象に過ぎず、想定を超えたことは常に起こりえます。そのリスクの大きさと、使うことによるベネフィットとを秤にかけて農薬とは向き合うべきだと思っています。

また、農薬を使わないことが、必ずしも安全につながるとも限りません。

例えば、害虫の被害を受けた大豆やリンゴは、被害を受けていないものに比べてアレルゲンが増加するといわれています。これは、病害虫に対抗するために、植物自らが体内に特別なタンパク質を作るためです。

何より、農薬を使わないことで収穫量が著しく減ってしまっては、農家は最低限の生活が維持できなくなってしまいます。これは、家族を危険にさらす行為にもつながります…生活の安全を守るためには、最低限度の収入が不可欠なことはいうまでもありません。

私の場合は、これらの天秤を見定めて、現時点では必要があればBT剤を使うことを選択しています。
(そもそも、化学農薬も極端には否定していません。)

BT剤は有機農業で使用が認められていますが、積極的に推奨されているというわけでもありません。BT剤を含め、全ての農薬は使わないという主義を貫いておられる有機農家さんもいるということも、併せてお伝えしておきたいと思います。

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