ヨトウムシの駆除方法や見分け方|米糠トラップや天然由来の農薬を紹介

昨日までは順調に育っていたのに、朝起きたら葉脈だけを残して葉がボロボロ!!!

虫が喰ったに違いない。
でも、周りに犯人は見当たらない…

これ、ヨトウムシの仕業かもしれません!

突然のように見える葉のボロボロ事件も、実は以前から兆候があったはずです。

レースのように所々白く透けた葉を見かけませんでしたか?
黒い糞の粒を見かけませんでしたか?

ヨトウムシは、孵化したばかりのときは簡単に駆除できますが、ある程度まで大きく成長してしまうと駆除が難しい非常に厄介な害虫です。雑食性であらゆる野菜につく可能性があり、葉だけでなく、花やつぼみ、茎までを食い荒らし、野菜の生長に甚大な被害を与えます。

今回はヨトウムシの被害にあわないための対策と、万が一ヨトウムシがついてしまった場合の駆除方法を紹介します。

ぴっこ
ぴっこ

ヨトウムシから大切な野菜を守るためには、早期発見早期駆除が重要なカギ
幼虫が小さなうちに発見できるように、まずはヨトウムシの生態を知ることから始めましょう

ヨトウムシとは?

ヨトウムシは蛾の幼虫です。

蛾の成虫そのものは体長2cm弱と小柄で、卵を産みつける以外には、葉を食べるなどの直接的な害はありません。でも、その卵から生まれる幼虫たちが、野菜に深刻な食害をもたらします。

ヨトウムシは夜行性で、日中は土の中などに潜み、夜になると出てきて野菜を食い荒らします。

夜に野菜を盗み食いするから「夜盗虫(ヨトウムシ)」

「ヨトウムシ」とは、この習性をもつ蛾の幼虫の総称で、日本ではヨトウガシロイチモジヨトウハスモンヨトウなどの種類が知られています。

蛾の幼虫は「卵→幼虫→サナギ→成虫」と姿を変えながら成長しますが、この3種のヨトウムシのうち、ヨトウガのみがナサギの期間が長く、ハスモンヨトウやシロイチモジヨトウは暑い季節には1週間前後、春や秋なら2~3週間前後で成虫に羽化します。後に解説しますが、ヨトウムシの被害を抑え込むには、成虫が卵を産み付けるタイミングを事前に予測し、備えることがとても大切です。サナギでの休眠期間や、サナギから成虫に変わる時期を知れば、この予測の手掛かりとなります。

ヨトウムシは、卵や幼虫の姿の違いからも種類を見分けることができます。野菜を食い荒らしているヨトウムシが、どの種類のものなのかを確認しましょう。

ぴっこ
ぴっこ

見分けるポイントは、卵なら毛の有無
幼虫なら動き方色や模様

ヨトウガ


  • 産み付けられた直後は薄い黄色で、次第に黒っぽい色に変わる。卵を覆う毛はない。
  • 幼虫
    若い幼虫はシャクトリムシのように動く。(大きな幼虫になると、他のヨトウムシと同じイモムシの動き方)
    頭が黄褐色で、体は灰色がかった黄色から黒色。前から後ろに向かって薄い三角の模様がライン状に並ぶ

ハスモンヨトウ


  • 毛におおわれた、黄土色の卵
  • 幼虫
    頭の後ろに一対の濃い黒色の斑紋があり、前から後ろに向かって、三角形の黒い模様が並ぶ。

シロイチモジヨトウ


  • 産毛におおわれた、薄黄色から灰白色の卵
  • 幼虫
    薄緑から茶色の体に、真ん中に青っぽい筋が入っている。中央に体の両側にピンク色の斑点が見えることも。

ちなみに、3種とも卵から孵化した直ぐは緑色で、成長にしたがって茶色や黒っぽい色に変わっていきます。色や模様の違いが鮮明になるのは3~4㎝程ほどの大きさになってからです。

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ヨトウムシはどこから来る?

野菜を食い荒らすヨトウムシは、蛾の成虫ではなく、孵化してからサナギになるまでの間の幼虫です。

ヨトウムシは寒さに弱く、卵を産むのは10月頃までといわれています。また、成虫の寿命は短く数日程度。つまり、ほとんどの幼虫、成虫は越冬できないことになります。(※)

では、5月頃に突如として現れるヨトウムシは、どこから来たのでしょう?

実は、ヨトウガやハスモンヨトウは、寒さが訪れると成虫になる前段階のサナギの状態で、土の中で越冬することが知られています。このサナギが春になると羽化して卵を産み、ちょうど夏野菜の植え付けのシーズンである5月上旬ごろから、孵化したヨトウムシによる被害が多発するのです。

※ヨトウガには、幼虫の姿で越冬するものが確認されています。

ヨトウムシの成虫の、1匹あたり産卵数は1000~3000個。一度にまとめて産むのではなく、数十~数百粒くらいずつの塊で、何か所かに分けて、葉の裏側に産み付けます。

これらが一斉に孵化すると思うと、ゾッとしますよね…

気温や種類によっても違いがありますが、ヨトウムシの卵は4日から1週間程度で孵化します。

孵化したばかりの若齢幼虫は、柔らかな葉肉部分だけを食べて、葉の表皮は残します。まだ姿が小さく、食害の量も少ないため見落としがちですが、葉を上から見ると、ヨトウムシがついている葉にはレース状に透けた無数の白い点が確認できます。

少し成長して中齢幼虫になると、表皮も残さず食べるため、葉に小さな穴があくようになります。

そして、体長が3㎝から5㎝程度の老齢幼虫に成長した姿が、私たちが良く知るヨトウムシ。老齢幼虫になると食べる量が急激に増えるため、一夜にして葉っぱが葉脈だけになってしまうこともあります。

老齢幼虫にまで成長すると激しい食害があらわになるため、誰でも「ヨトウムシが発生した!」と気が付きます。

でも、この時には既に手遅れの場合も…

大食漢の老齢幼虫たちが、あちらこちらに何匹も潜んでいるため、一瞬にして野菜が消えていきます。その状況に「突然、ヨトウムシが襲ってきた!」という感覚になるのですが、実はその数週間前から、じわりじわりと野菜を蝕みながら、若齢のヨトウムシが成長を続けていたのです。

ヨトウムシは、どんな被害をもたらす?

ヨトウムシは雑食性で、ほとんどの野菜で被害にあう可能性があります。

特に、老齢幼虫にまで成長したヨトウムシの食害は深刻です。

キャベツなら、結球前は葉脈だけを残して生長点もろとも食べられてしまいますし、結球後は中に入り込んで糞をまき散らかしながら食い荒らします。
不幸なことに、ヨトウムシはキャベツの結球する時期に大量発生する傾向があります。

トマトなら葉のみでなく、花や果実、茎までも食べて、成長を著しく妨げます。

特に、野菜の生長初期でヨトウムシの被害にあうと、その後の生長が止まり枯れてしまうことも少なくありません。

ヨトウムシの駆除が難しい理由

老齢期のヨトウムシの幼虫は、昼間は土の中に姿を隠します。

そのため野菜が食害されても「犯人はヨトウムシ!」と断定することが、そもそも容易ではありません。もしかしたら、他の昆虫の仕業かもしれませんし、ナメクジの可能性もあります。

見分けるポイントの一つとして、食べられた葉の周辺に黒や茶色のベタっとした糞が散らばっているようならヨトウムシの可能性が濃厚です。被害にあった株や、その周りの土を1㎝ほど軽く掘り起こしてみると、ヨトウムシが発見できます。

経験上になりますが、ヨトウムシは1匹ではなく、ほとんどの場合で4匹前後潜んでいます。

1匹捕獲して「見つかった!」と安心しないで、周囲の土も入念にチェックするようにしましょう。

ベタっとした糞ではなく、少量のニョロっとした糞と、キラキラとした白い筋がある場合には、犯人は同じ夜行性のナメクジです。ナメクジの駆除方法はこちらで詳しく紹介していますので、よかったら参考にしてくださいね。
▶ナメクジの繁殖時期や安全で効果的な駆除方法は?

実は、ヨトウムシの幼虫の全が土の中に潜るわけではありません。「夜盗虫(ヨトウムシ)」になるのは、最も食欲が旺盛な老齢期の幼虫のみで、孵化したばかりの若齢期の幼虫は日中も土には潜らず葉の裏側で、しかも同時に孵化した仲間たちと集団で生活しています。

この若齢期のうちに見つけることができれば、葉っぱを取り除くだけで簡単に駆除することができますし、野菜も致命傷を負うことはありません。

さらに、ヨトウムシの幼虫は、生長するにしたがって体が強くなり自然由来、化学合成を問わず剤の効きが悪くなります動きも意外に早く、発見しても茂みの中に逃げられてしまうことが少なくありません。

つまり、若齢期を逃してしまうと、見つけにくいという以外の理由でも、駆除が難しくなります。
ヨトウムシとの戦いは、卵を産み付けられてから1、2週間の対応で勝敗が決まるといっても過言ではないのです。

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ヨトウムシのもっとも効果的な駆除方法は?

ヨトウムシ防除のポイントは、第一に卵を産ませない。そして、産み付けられた卵や幼虫をできるだけ早期に発見、駆除することです。

卵や若齢幼虫の駆除は、手で取る方法がもっとも効果的で確実です。

卵は、葉の裏に産み付けられています。蛾の成虫を見かけたときや、発生が多発する時期には、こまめに卵や幼虫がいないかをチェックするようにしましょう。若齢幼虫は小さく葉と同じ緑色をしていますが、食害された葉はところどころレースのように白く透けて見えるため、慣れれば簡単に見つけられます。

でも、たまにしか畑に行けないという方もいるかと思います。
この記事を読んでいる人の中には、既に早期発見のタイミングを逃してしまい、慌てて対策を調べている…という方も多いのではないでしょうか?

早期発見できなかった場合には、米糠でトラップを作り捕獲する方法が有効です。
また、コーヒーかすを使って、ヨトウムシの被害を軽減することもできます。

もし、それでも被害の終息が見込めそうにない場合には、農薬を使うのも一つの手段です。

化学薬品を野菜に散布するのは、ちょっと嫌だな…

という方には、有機栽培にも使用できる自然由来の安全性の高い薬剤もありますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
また、野菜に薬液を吹きかけるのではなく、株の周りにまいて誘き寄せて駆除するタイプ、ヨトウムシが付く前に予防として土に混和するタイプ、などの農薬もあります。

米糠トラップで駆除

米糠トラップは、米糠を株元の近くに設置するだけの簡単なもの。米糠を容器にいれて、土と同じ高さになるように埋めれば完成です。

米糠はコイン精米機からタダでもらえますし、半分に切ったペットボトルなど家にある空き容器で作れるためコスパも抜群です。

ヨトウムシは米糠の匂いに引き寄せられ、米糠を食べているうちにトラップに落下します。米糠の中で窒息死したり、消化ができずに死んでしまうものもいるようですが、トラップにハマっても生き続けるヨトウムシもいるため、放置しないで速やかに駆除するようにしましょう

米糠トラップは、ヨトウムシの駆除にとても有効ですが、米糠はナメクジなど別の害虫も寄せ付けてしまうデメリットもあります。また、ヨトウムシは生の米糠しか食べず、雨で米糠が水を含むと、トラップとして効かなくなるため注意してください。

コーヒーかすで忌避

ヨトウムシはコーヒーのカフェイン成分を嫌います。そのため、コーヒーかすを撒いておくとヨトウムシが寄り付きにくくなります。

また、すでにヨトウムシ被害がみられる株でも、土にまくとカフェインを嫌がり知らぬ間にどこかへ行ってしまいます。ただし、殺虫するまでの効果はなく、あくまで潜伏先が周辺の別の場所に移っただけ。ヨトウムシそのものの数を減すことはできません。

ゼンターリ顆粒水和剤|有機栽培にも使える自然由来系の農薬

ゼンターリ顆粒水和剤はBT剤の一つで、化学合成された農薬ではなく、自然界に普通に生息する菌を利用した生物農薬の一種です。有機栽培でも使用が認められた安全性の高い農薬で、プロの農家にも使用されています。

ゼンターリ顆粒水和剤の有効成分であるバチルス・チューリンゲンシス菌(BT)は、主にチョウやガの幼虫の消化管のみ毒素として働き、人を含めた、その他の哺乳類には影響がありません
BT剤は安全な薬剤である反面、効果が弱いともいわれることもありますが、私の経験としては、ゼンターリ顆粒水和剤は化学農薬と同じくらい、ヨトウムシ対策に効果があります。ただし、BT剤の特性を理解して、正しく使うことが大前提になります。

BT剤が安全な理由や、ゼンターリ顆粒水和剤の正しい使い方はこちらで詳しく紹介しています。
▶ゼンターリ顆粒水和剤の使い方|BT剤が安全な理由と使用の注意点

ゼンターリは、ほぼ全ての野菜に使用することができ、栽培期間中に何度でも散布することが可能です。

オルトラン粒剤・水和剤|食害を予防する浸透移行性農薬

オルトランは害虫の神経に作用する有機リン系の化学合成殺虫剤で、小さなボトルや箱で販売されているため家庭菜園でも使いやすい農薬です。土に混ぜる粒剤タイプと、水に溶かして葉に吹きかける水和剤タイプとがあります。

害虫に直接薬剤をかけたり、食べさせたりして殺すタイプの農薬ではなく、殺虫成分を植物の根や葉から吸収させて全体に浸透させることで、害虫を寄せ付けにくしたり、食べた虫を駆除したりすることができるというものです。吸収された成分は、その後に伸びる茎や葉などにも浸透していくため、一度の処理で1か月程度と効果が長く持続し、雨にあたって効果がなくなることもありません。また、一定期間を経過すると有効成分は消滅するため、収穫時には残らないといわれています。ヨトウムシに狙われやすい、定植して間もない時期の防除に非常に効果的な薬剤です。

ただし、オルトランには注意しなければならない点があります。

オルトランは、ヨトウムシの食害が発生してからの投与するものではありません。

農薬にはそれぞれ、栽培品目ごとに定められた用法があります。
どの野菜に、どのタイミングで、何回までなら使えるか…などです。

粒剤の場合は投与できるタイミングが一部の野菜や観賞用の植物を除き、種まきや苗の定植時の1回のみと定められています。このタイミングを逃すと、後からは投与できません

ヨトウムシが野菜につくのは、定植してしばらく経ってから。オルトラン粒剤でヨトウムシ対策をするなら、種まきや定植のときに予め入れておく必要があるのです。

葉に吹きかけるタイプの水和剤は、ヨトウムシの被害に気が付いてからでも散布することができます。でも、ヨトウムシの被害にあいやすいキャベツや白菜、レタスなどは、収穫の30日以上前までしか使うことができません結球が始まる栽培後半でヨトウムシに襲撃されても、オルトラン水和剤では駆除できないのです。

また、オルトランは比較的たくさんの野菜品目に使える農薬ですが、ミニトマトなどのように使用が認められていない野菜もあるため注意が必要です。登録されていない野菜には使えないため、購入前に必ず確認するようにしましょう。

アクセルベイト|誘引して駆除する毒餌

アクセルベイトはいわゆる毒餌タイプの化学合成殺虫剤で、害虫の好む餌に殺虫成分を混ぜ込み、誤食を誘って駆除する農薬です。使い方も簡単で、ペレット状の薬剤を野菜の株元にパラパラと撒くだけです。ヨトウムシの食害発生後に散布して駆除することができ、収穫間近まで使用できます。

ただしアクセルベイトは、オルトランに比べて使用できる野菜品目は少なめです。また、どちらかと言えばプロ農家向けの農薬のため、大容量でしか販売されていません。

同じ毒餌タイプの農薬でサンケイデナポンは、家庭菜園向けに少量で販売されていまが、有効成分がアクセルベイトとは異なり、使える野菜品目もさらに少なく、使用条件も異なります。

そのため毒餌タイプの農薬を選ぶなら、アクセルベイトの方がお勧めです。
いずれの場合も、登録されていな野菜には使えないため、必ず説明書きを確認してから使用するようにしましょう。

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ヨトウムシの被害にあわないために

ヨトウムシの被害は、成虫の蛾が野菜に卵を産み付けるところから始まります。飛んでくる蛾を寄せつけないためには、野菜を防虫ネットで覆うことが有効です。

でも、防虫ネットの中で、ヨトウムシが発生してしまうことがあります。原因は、土の中にいたサナギが羽化したためです。

特にヨトウガやハスモンヨトウのサナギは、冬の間は土の中で休眠します。春先に畝をつくるときには、入念に掘り起こしてサナギがいないかをチェックしましょう。冬の間に張りっぱなしにしていたマルチの下などには、潜んで可能性が大です。

また、もし卵を産み付けられた場合は、早期発見早期駆除がとても重要です。ヨトウムシは成長するにつれて駆除が難しくなり、被害も甚大なものになるためです。
卵や孵化したばかりの幼虫をいち早く見つけるためには、ヨトウムシが発生しやすい時期を把握し、葉に白いかすり状の点のようなものが散らばって見えるなどの初期の兆候を見逃さないようにすることです。

発生時期は、ヨトウムシの種類によって違います。

ヨトウガは春に生まれた幼虫がサナギに成長すると、土の中で秋まで休眠し、羽化して次の世代になる卵を産むのは9月頃です。5月~6月9月~10月頃に警戒すれば、真夏の時期には一旦は終息する害虫です。

一方で、ハスモンヨトウシロイチモジヨトウのサナギには、夏の休眠期間がありません気温が高い時期ならサナギは1週間程で羽化し、成虫になると直ぐに次の世代の卵を産みます。このように短い周期で世代交代を繰り返すためとても厄介です。
ハスモンヨトウやシロイチモジヨトウの発生ピークは8月中旬~9月頃といわれていますが、実際には6月から10月ごろまで常に注意が必要です。

発生してしまったヨトウムシは農薬などを使って駆除することもできますが、どこから来るのか、いつ発生するのか、どのような初期症状が現れるのかなどの害虫としての特性を把握しておけば、少ない農薬で、より効果的に被害を抑え込むことができます。

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